2023.04.29 06:33ルイス・サッカー 『穴 HOLES』 懸命に生きているのに何故かツイてない少年スタンリー・イェルナッツ(Stanley Yelnats:前からでも後ろからでも綴りが同じ!?)。ある日の放課後、学校の帰り道で、なぜか頭の上にスニーカーが落ちてきた。その瞬間、古いスニーカーの再利用の方法を研究している父さんの姿が思い浮かんで駆けだしたら、逮捕された。その靴は野球の超有名スター選手のもので、競りにかけてホームレスの援助金にしようと避難所に展示されていたところを盗まれたものだったのだ。必死の弁明もむなしく、裁判官から卑劣と断じられたスタンリーは、無実の罪で更正施設に放り込まれてしまう。送られたのは、カッチカチに干上がった焼ける大地が広がる砂漠のど真ん中にある“グリーン・レイク・キャン...
2023.04.28 07:56伊豆紀行1 修善寺 新年度が始まってもう早ひと月、気がつけばゴールデンウィークも目前だ。年度の変わり目というのは、これといって特別忙しいことがあるわけでもないちっぽけな古本屋のおやじにとっても、どこか慌ただしく、時間の過ぎるのが早い。 長く教員をしていたせいか、四月はお正月よりも新しい年の始まりという感覚が強く、気持ちも改まる。だから年度末はなるべく俗世から身を隔て、溜まりに溜まった閻浮(えんぶ)の麈(ちり)を落として新年度に備えたい。そんな思いから、三月末は伊豆の修善寺に籠もるようになった。かれこれ二十年近くになる。 修善寺というと、空海開湯の伝説を持つ屈指の名湯で、鎌倉幕府の権力闘争に敗れた者たちの終焉の地としても知られる。そのうちのひとり二代将軍頼家は、温泉街の中...
2023.04.01 08:30一枚の絵 一枚の絵と出会った。「この近くにKIKUYA GARDENというCafe & Rentalspaceがオープンします。私たちが手がけました。ぜひ訪ねてみて下さい」。築80年にもなる老朽化した我が家のリフォームをお願いして以来、十数年のお付き合いがある工務店の担当の方に、そんな風に紹介していただいたのがきっかけだった。KIKUYA GARDENのオーナーは、障害者の母親たちによって設立された知的障害者の生活介護施設アトリエコーナスを主催されている白岩高子さん。初対面からとてもフレンドリーに接して下さって、パートナーも私もすぐに大ファンになってしまったのだが、お伺いしたときちょうどホールで行われていたのが、アトリエコーナ...