台風がやってきた9月に比べて(恨めしくもその台風は私の主催したイベントを直撃した!)、10月は比較的さわやかな晴天に恵まれたように思う。開け放った窓からさらさらと吹く微風に頬を撫でられながら、ひとり本に囲まれて、カウンター越しに明るい秋の日差しが降り注ぐ公園を眺めていると、そこはかとなく昔日の記憶がよみがえる。お店の近くに実家があって、今もそこに住んでいる私にとって、この公園は幼い頃に遊び馴染んだ場所だからだ。10月24日も美しい秋晴れで、そんなことを考えながら窓越しに公園の風景を眺めていて、あの頃こんな店があったら、自分はどうしていただろうと、ふと思った。つい、遊びさざめく子どもたちの中に幼い頃の自分の姿を探しそうになって、苦笑した。この日はたまっていた本のクリーニングや値付けに忙殺された。書架を整理し、新しく仕入れた本を排架し、お薦めの本の書評を3本ほど書いたところで、雨に気づいた。私の店はたくさんの光を取り込むために天井の一部が透明な波板になっていて、雨が降るとぱらぱらと軽快な音を立てる。公園を見ると、昼間の快晴が嘘のように暗く曇り、木々の枝が強い風にしなっている。見るうちに雨脚はどんどん強まり、どしゃぶりになった。どうしようか。そろそろ閉店なのに、傘がない。そういえば、きょうもお客がなかったな、と思っていると、階段の下から、すいませーん、と声がした。あのー、トイレをかしてくれませんか。あがっておいで、というと、とんとんと階段をのぼる足音がした。扉を開けると、ずぶ濡れの男の子が一人立っていた。私は思わず息をのんだ。そこにいたのは、なんと子どもの頃の私だった…なんて不可思議なことが起こりそうなお天気の急変だったが、むろんそんなことは起きなかった。やってきたのは小学生の女の子が三人。遊んでいて急な雨に遭い、困ったらしい。よかったら本でも読んでって、と声をかけると、窓際のカウンターにちょこんと座って、絵本を読みながらしばらくおしゃべりして帰って行った。かわいいお客さまに、なんとなくほのぼのとしていると、いつのまにか雨が上がっていた。
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