お店オープン顛末記2

そんなこんなで、7月はわずか一週間の営業だったのにそこそこお客さまがお見えになり、かくも小さな古書店には分不相応ではないかと思うほどだった。いやはや、いらざる心配。8月に入ったとたん、落ち着いた。8月初日は、お客さまゼロだった。その後も、客足は芳しくなく(今から思うとまだましな方だったが)、何か販促努力をしなければと思いながら、無謀にも9月に自分が主催するイベントを立ち上げてしまっていたので、その準備に忙殺され、身動きがとれなかった。悶々とした日々を過ごすうちにもう早お盆という8月15日、またまた、東京から来ましたとおっしゃる女性のお客さまがお越しになった。私の店は地元より東京の方で知られているのだろうかと訝った(もちろん本当は訝ってなどいない)。こんなことなら東京で営業した方がはやるかも知れないと、胸の内で密かにぼけていたら、件の女性客が「私は吉村萬壱さんの大ファンなんです」。吉村萬壱とは『ハリガネムシ』で第129回芥川賞を受賞し、以来次々と話題作、問題作を発表している気鋭の作家である。それで合点がいった。実は吉村氏とは元職場の同僚で、友人でもあり、私の古本や間借りブックカフェの活動を陰に陽に支援して下さっている(萬壱さんのことについてはいずれたっぷりと…)。なんでも、萬さんのツイッターで当店のことをお知りになったとか。女性客は、数々の作品で高い評価を受けておられる映像作家の三宅美奈子さん。三宅さんは帰京後、ご自身が活動されている下北沢『BOOKSHOP TRAVELLER』のひと箱本屋「BOOKS 1902」の名義で「大阪、本屋さんの旅①」https://note.com/minako_photo/n/n7f28c2b0e70a という記事をアップし、写真入りで当店を紹介して下さっています。三宅さんのご来店がきっかけになったのか、この日は久しぶりに盛況で、何とか売上げにも結びついたのだった。三宅さん、萬さん、ありがとうございました。(ヴィスナー)


ヴィスナー文庫

時間がゆったりと流れる 公園のそばの癒し空間