一年

 歳のせいか、時間の経つのが早い。あっというに年が改まった。人は誰しも、生きていればそれぞれに日々さまざまなことがあるが、その分を割り引いて考えたとしても、昨年は実にジェットコースターに乗ったような一年だった。能登の地震で胸の痛むお正月が過ぎて、間なしにあった古書市で痛めた左肩の腱板断裂がわかったのが2月の始め。3月末に手術を決断、執刀は4ヶ月待ちの7月31日に決まり、肩の痛みをだましだましの憂鬱な日々が始まった。並行して、懸案だったカフェスペースの改装工事の打ち合わせがようやく実現。資材の高騰や人手不足で計画がなかなか進まず一年近くも滞っていたのが、3月に工務店が決まり、とんとん拍子に軌道に乗った。ゴールデンウィーク明けの着工が決まった矢先、以前に本欄でも紹介したが(「初夏」2024.5.26)、今度はパートナーが自宅のウッドデッキで転倒。右手首橈骨遠位端骨折。私は左腕、パートナーは右手が使えない状態で、ペットボトルのキャップをひねるのも、缶飲料のプルタブを引っ張るのも、私の右手とパートナーの左手の共同作業という、不自由な日常が続く。その一方で、工事は順調に進んで、6月下旬に無事竣工。7月はじめの内覧会を経て、念願だったヴィスナーカフェのオープンにこぎつけた。が、まもなく私は左肩の手術で入院。回復の兆しを見せていたとはいえまだ右手が思うように動かせないパートナーに、古書店とカフェの両方の店番を頼んで、ひと月余り留守にした。9月始めに予定通り退院したものの、入院が影響したのか、みつばち古書部や書肆七味の店番もしばらくできなかったからか、身体も思うように動かせなかったせいなのか、いずれにしても8月、9月、10月の書籍売上げが激減。パートナーの右手も完全回復にはほど遠く、この時期は少し苦しかった。

 改善のきっかけは、11月に行われた恒例のオープンナガヤだった。今年は、パートナーの知人でフェアトレードの輸入品販売を手がけておられるHore×Voleeさんに古着・雑貨販売で参加していただき、多くのお客さまに足を運んでいただいた。本もよく売れ、一日の最高売上げ記録を大幅に更新した(もっとも、もともとたいした数字ではないので更新のハードルはかなり低いのだが)。12月にはキクヤガーデンオープン三周年記念イベント「占い祭り」に出店、ここではカフェ部門の売上げ記録を作った(記録と呼べるほどのものかどうか些か怪しいが)。ほかにも、知人、友人や常連さん、その紹介でお見えになったお客さま、数少ないリピーターの方々のご来店もあり、何とか一息ついたのだった。

 年末は早めに店を閉め、パートナーと二人で東京に出かけた。上京の折にはよく立ち寄るお店を訪ねたり、古書店をめぐったり、小春日和の隅田川沿いを散歩したり、久しぶりにふたりでゆっくり過ごした。最後の晩には、私たちの最大の支援者である姉夫婦と横浜中華街の華正楼で会食。夜の中華街は、ネオンや無数のランタンの光が溢れ、華やかだった。

 新年、明けましておめでとうございます。いろいろあった一年をなんとか乗り切って、穏やかなお正月を迎えることができました。本年も、ヴィスナー文庫・ヴィスナーカフェをよろしくお願い致します。ご来店を、心よりお待ち申し上げております。


ヴィスナー文庫

時間がゆったりと流れる 公園のそばの癒し空間