ついこの間まで肩をすぼめてダウンジャケットの襟元をかき合わせていたのに、いつのまにか、もうすっかり春である。春の便りと言えば、やっぱり花。我が家でも、3月に入ってクリスマスローズが咲き始め、いまはヒヤシンスが美しい姿を見せている。ちなみに、春に咲くのに何でクリスマスローズかと思っていたら、何でも、キンポウゲ科の学名ヘレボルス・ニゲルという花がちょうどクリスマスの頃に咲くバラのような花なのでついた名前だとか。春に咲くのは同じ仲間のヘレボルス・オリエンタリスという早咲きの品種で、うつむき加減に咲く姿が風情を感じさせ、はにかみや慎ましさを花言葉とする芍薬に例えて、和名を寒芍薬というそうだ。
まったく、いかにもな蘊蓄を傾けたが、残念ながらすべて検索エンジンを駆使して調べた受け売りで、実は当方、植物についてはまるで疎い。公園に隣接する当店では、窓から次々と花の便りが届く。まだ少々肌寒かったほぼひと月ほども前から満開だった木が、お店の窓から2本見えていて、ああ、こんなに早く咲くのだから、手前のは梅、奥の遠い方は桃だろう、などと、パートナーと適当な見当を話していたのだが、ご近所の方のお話しでは、濃い色の八重のものは里桜の一種、薄いピンクの花は杏だそうである。
表通りからお店の方に入っていく路地の角に交番があって、その裾周りをなぞるようにかわいらしい黄色の花が群生している。遠目に菜の花かと見紛うたが、翌朝出勤するときに見ると花びらが閉じていたので、カタバミなのではないかと思う。そういえば我が家の家紋は、ハート型の葉に剣先をあしらった「丸に剣片喰」というやつで、なるほどこれがカタバミか、と少々親近感がわく。
東京では早々と開花宣言があった由だが、我が方ではソメイヨシノはさすがにまだ遠いようだ。ただ、公園の一角の一本だけが、すでに満開に近い。公園の掃除用具を入れてあるプレハブのそばにあるこの木は、他の木に比べて毎年開花がとても早い。そこだけ日当たりが良いせいか、それともそばに立つスチール製のプレハブ小屋が周辺の気温に影響しているのか、などと素人の当て推量をしているのだが。それでも、もう公園の桜のつぼみははちきれんばかり。満開も近い。良かったら、当店の窓から、咲き誇る満開の桜をご覧になりにいらっしゃいませんか。
0コメント