2023.05.29 08:50伊豆紀行4 佐野美術館 今回の伊豆行きで、初めて訪ねたところがある。佐野美術館である。伊豆箱根鉄道の三島田町駅から歩いて数分のところにある。佐野美術館の創立者は、佐野隆一という地元の実業家で、化学製品製造業で財をなすと、自らを育ててくれた地元への恩返しにと、福祉施設や保育園、学校関連施設、図書館建設などに寄与・貢献した。美術館もそのひとつである。もともと父親が骨董品蒐集が趣味で、佐野自身も刀剣や陶磁器などの古美術品蒐集家として知られていたが、自らの喜寿の記念に美術館をつくり、膨大なコレクションをすべて寄贈した。これが佐野美術館の元である。佐野は美術館建設に際し、戦前、両親のために建てた回遊式日本庭園を有する和風邸宅を、美術館の用地として提供した。のちに邸宅は三島市に寄贈され...
2023.05.21 07:08伊豆紀行3 源兵衛川 近年、私たちは新幹線で三島に着くと、まず三嶋大社に向かう。 駅前すぐの所には、楽寿園がある。明治維新期の皇族小松宮彰仁親王の別邸として建てられた数寄屋造りの楽寿館を中心に、富士山の雪解け水が湧き出す小浜池や日本庭園を囲んで160種もの樹木がこんもりと茂る森が広がる、市立公園である。伊豆に行き始めた頃はよく訪れたが、近頃は三嶋大社に直行することが多い。理由がある。桜である。 伊豆は河津桜が有名だが、早咲きである。三月末というと、河津桜は疾うに散ってしまっていて間に合わず、かといってソメイヨシノにはまだ早い、桜を愛でるには半端な時期だった。ところが十年ほど前からだろうか、ソメイヨシノの開花がどんどん早くなって、今や桜花爛漫の季節。ソメイヨシノをはじめ、白...
2023.05.14 07:20伊豆紀行2 伊豆箱根鉄道駿豆線 修善寺へは、JR三島駅から伊豆箱根鉄道駿豆線を使う。十余りの駅を経て三島~修善寺間を約四十分弱で結ぶ。地元では「いずっぱこ」の愛称で親しまれている。観光地なのにさほど混むこともなく(年度末にしか行かないせいかもしれないが)、単線で、慌てず急がず、穏やかな田園風景の中を至極生真面目に、ごとごとと走る。鎌倉の江ノ電のようにおしゃれでもなく京都の嵐電ほど粋でもないが(個人的な感想です)、車窓からはどこを走っていても富士山が望め、春ともなれば美しい花々が沿線を彩る。……大場、伊豆仁田、原木、韮山、田京、伊豆長岡、大仁、牧之郷……。ぼんやり眺めているうちに、駅名の風変わりな読み方にも興をそそられる。順に、だいば、いずにった、ばらき(濁る)、にらやま、たきょう、...