阿倍野区では、区内の歴史的建造物、樹木や石碑などの古跡、商店街や老舗の名店など自慢の都市景観資源を「あべのdakara」(あべのの「お宝」)の愛称で呼んでいる。その「あべのdakara」のお散歩マップ配布に因んだ「知られざる阿倍野の魅力と歴史を発見!ふらり街あるき」が昨年12月3日に行われた。当店にもお立ち寄りいただき、久しぶりに賑わった。海外翻訳物のハードボイルドミステリーに造詣が深い案内役の方に当店のラインナップをお褒めいただいたこと、阿倍野区にまつわる文学作品や作家を紹介した自作のZINE『阿倍野文学散歩』が街歩きの趣旨にぴったりだと何冊かお買い上げいただいたことが、大変嬉しかった。古本屋冥利に尽きるというものである。
例によって閑古鳥が喧しく鳴いていた12月24日、クリスマスイブの日の午後。白い玉房のついた赤い帽子に、もふもふの白ボタンの赤いワンピースを着た小さな女の子のサンタクロースが、突然妖精のようにふわりと現れ、私が店番をしていたカウンターにチョコレートを二粒置いて、風のように去っていった。一緒にいたパートナーと私は、思わず顔を見合わせた。今、サンタさんが来たね。すると、次の瞬間、閑古鳥は何処かへ飛び去り、千客万来。オープンの日に次ぐ、当店史上二番目の売上げを記録したのだった。かわいいサンタさんの正体は、当施設1F「みんなの図書室ほんむすび」の棚オーナーのお嬢さんだったのだが、ヴィスナー文庫にとっては、すてきな本物のサンタクロースだった。
長年、年賀状だけのお付き合いになってしまっている古い友人に、古書店始めましたと記したら、奈良県在住の中学の先輩からすぐに詳しい場所を問い合わせるメールが届いた。寄る年波で大阪へ出るのも億劫になってきているが、暖かくなったらぜひお伺いしたい、とあった。楽しみができたと思っていた矢先の1月21日、元の職場の同僚が突然やってきてくれた。実に20年ぶりの再会だった。少々白いものが増えたけど、お互い変わらんね、と笑い合った。連絡してみるものだな、と感激していたら、その2日後の23日、別の知人が訪ねてくれた。こちらはなんと38年ぶり。互いにマスクを外して面影を確かめ合い、旧交を温めた。神様がくれたお年玉である。
本欄のタイトルを、「日記」から「ここだけの話」に変えることにした。ヴィスナー文庫の日常を記すというよりトピックを紹介するコーナーだし、日記というにはあまりに間隔があきすぎる、という反省もあったからだ。これからもぜひ、ご愛読を。
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