暮れから年明けの事々 2

 私の古本活動は、2018年10月にシェア型古書店発祥の店みつばち古書部に参加したことを嚆矢とするが、その頃は文の里商店街にあるみつばち古書部の店頭で、さまざまなイベントが行われていた。そのひとつに、第18回日本ファンタジーノベル大賞受賞作『僕僕先生』シリーズで知られる作家の仁木英之氏を講師に招いて行われたショートショート創作講座があり、早速参加させていただいた。みつばち古書部の部員に加わってまだ間もない頃だったと記憶している。「手元にまとまったお金が入ったら」をテーマにそれぞれがお話をつくって発表し、仁木先生の助言をいただくというワークショップで、参加者はみな初対面ながら楽しいひとときを過ごした。仁木先生の薦めもあって、作品に仕上げて同人誌をつくれたらいいねなどと盛り上がったのだが、なんとなくそのままになった。

 4年がたったある夜、右肩鍵盤断裂の手術を受けて入院中の私のスマホに一本の電話があった。当時ワークショップを主催して下さった方からで、あのとき話題に出ていた同人誌を本当につくりませんか、という嬉しいお誘いだった。リハビリ入院で退屈があくびをするような毎日を過ごしていたこともあって、二つ返事で参加を決めた。テーマは「もし百万円が手に入ったら」。以来、創作、合評、書き直し、校正を何度も重ね、一年がかりでようやく完成。その打ち上げの昼食会が昨年11月26日、当店で開かれたのだった。創作活動の真っ最中に私の店がオープンしたのを知った主催者の方のご配慮だった。ともに創作活動をしたメンバーにお店に来ていただくのは、実に嬉しい出来事だった。

 『とある百万円にまつわる小説集』。淡い藤色が印象的な美しい表紙の、同人誌では珍しい文庫版。メンバーには文芸誌の同人誌評で取り上げられた方や公募文学賞で最終選考に残った方などがいて、力の劣る拙作はともかく、なかなかの力作揃い。当店にも、わずかだがまだ在庫があるので、ご興味のある方はぜひお手にとってご覧になっていただければ、と思う。

ヴィスナー文庫

時間がゆったりと流れる 公園のそばの癒し空間