開店から半年。雑事に取り紛れている間に、いつのまにか年が改まった。この日記も、年末の慌ただしさや正月に言寄せた横着ですっかりご無沙汰してしまったので、まずは新年の手始めに、暮れから年明けにお店であった出来事を、とりとめなく書き綴ってみようと思う。
旧年11月12日、大阪長屋の保全活用を目的としたオープンハウスイベント「オープンナガヤ大阪」が実施され、参加された多くの方々がお店に立ち寄って下さった。皆さん、古民家のリノベーションや活用に興味のある方ばかりで、良い物件があればアトリエやチャレンジショップを始めたいとお考えの方も、多くいらっしゃった。当店が入る施設では、2階奥のスペースでちょうどテナントを募集しているところでもあり、話が弾んだ。なかでも、古本と相性のいい古着とアンティーク雑貨のお店をご希望の方とは、すっかり意気投合。その方は、近代文学を修められ博士号をお持ちだとのこと、古着・雑貨・古書のsecond-hand marketや文学博士を囲んでの近代文学読書会など、アイデアが次々と湧いてきて大いに盛り上がった。良い物件に出会われることを、心から願う。
同月19日は読書会。お題は、大江戸捕物エンターテインメント作品『お月見侍 ととのいました』。気軽にスイスイ読める明朗ミステリー時代小説である。ゆるゆる読んで、好き勝手に語り合おうというわけだが、今回は、それを作者を囲んでやろうじゃないか、という試みだった。お招きしたのは作家三咲光郞氏。1998年、「大正四年の狙撃手(スナイパー)」で第78回オール讀物新人賞を受賞して文壇にデビュー、2001年『群蝶の空』で第8回松本清張賞を受賞、以来、社会派の重厚なサスペンスやミステリーを発表している作家生活三十年のベテランである。当日は7名のご参加をいただいた。三咲さんから、文芸作品がどんなふうに生まれるか、業界のちょっとしたウラ話を交えてのお話があるなど、肩の凝らない、楽しい文学談義になった。実は三咲さんは、私の現役時代の、職場の元同僚。ヴィスナー文庫開店にあたって、いろいろとご支援をいただいたおひとりである。そもそも、この読書会も、開店のこけら落としに、と、三咲さんからご提案をただいて実現した。作品を生んだご本人に直接質問ができてお話を聞けるとあって、参加者の皆さんにも頗る好評で、できれば第2回目を、と密かに目論んだりしている。年が明けてすぐ、三咲さんの新刊が刊行された。「論創ミステリ叢書」で知られる人文・社会科学系出版社論創社の創業50周年を記念して公募された論創ミステリー大賞受賞作『空襲の樹』。次回のお題は、この作品などどうだろう。
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